懐かしいカメラ 其の三

いろいろ(各社)

 渡辺美里が1986年にEpic/Sonyから出したLovin'Youという二枚組CDの一枚であるHEREの歌詞カードの写真はカメラ好きにオッと思わせるでモノである。それはカメラで演出した美里とでもいうイエローのコートとカメラのブラックが作り出すコントラスト、肌の色とカメラの金属の質感やレンズの透明感がいい感じの写真である。

 表はアップした彼女の襟元にミノックス35(Minox)がありケーブルレリーズも見え、帽子に二眼レフ用のNDらしきフィルターを乗せている。目のキャッチライトが効いた写真である。

 裏は半身の彼女と国産舶来カメラのあれこれオンパレードである。まず首から下げているのは角張ったボディーのキャノン?「Sb(Canon)、その下はブローニーサイズのパノラマ写真が撮れる特殊なシャッターを持つパノンワイドラックス(PanonWidelux)、その横にはツアイスの二眼レフ、イコフレックス(IKOFLEX ,Zeiss Ikon)しかもケーブルレリーズはシャッターメーカーとして有名なプロンター(Pronter)のロングタイプ、一番下は蛇腹のピールオフタイプ(2枚に引き剥がす)を使うポラロイド(Polaroid Land)のようである。

 右肩からはハッセルブラッド500CM(Hasselblad)のように見えるがアクセサリーシューの形状が多少違うので500Cか?レンズはゾナー150mmにしては短いような気もするので135mmか?すぐ下にミノックス35があり、右手に持っているのはオリンパス35(Olympus)であろうか。ついでであるがコンパクトでポケットに入るミノックス35用の電池は売っているところが少なく手に入れ難いことを思い出してしまった。帽子のフィルターはローライフレックス用らしい。

 左手に下げているのはリコー(Richo)と思われるが手に持っている機種は不明。その下はニコンFフォトミック(Nikon)かニコンFフォトミックTNのブラックボディで、レンズは50mm F1.4、鏡胴のブラックと梨地が調和している。正面は三脚に乗ったローライフレックス(RolleiFlex)である。全体がストレートなラインで構成された中で、ROLLEIFLEXの下にある露出計受光部の複眼は何とも言えない微妙なカーブを持ち独特の雰囲気がある。

 何の脈絡もないようなこれらのカメラの取り合わせであるが、共通のキーワードはクラシックカメラの領域に入る(入りつつある?)が現役として使える機種であるということか。
渡辺美里がカメラ好きかどうかは不明であるが、この写真はデザイナーやカメラマンの嗜好が色濃いような気がする。ライナーノーツによると渡辺美里のアルバムデザインはAfter Hours Studioが手掛け、アートディレクショントとデザインは同スタジオのKeiji Uyedaそして写真はNaoto Ohkawaとなっている。

 撮影当日のことを考えると撮影クルーが日常使用している機材は別として、スタイリスト(ライナーノーツではYuko Shimada)はカメラの手配が大変だったろうななどと余計な心配をしてしまう。
実際プロカメラマンはハッセルブラッドやローライフレックスを使用している場合が多く、それらの手配は不要としても他はどこからどのように調達してきたのであろうか。
ところでこれらは使用したことがあり知っていそうでよく見ると記憶とどこかが違ったり、見ただけのモノは自分の記憶がアヤフヤであったことを思い知らされ、それでも見れば見るほど興味をそそられる不思議で何ともいえない写真である。

 因みにこの中にはMy RevolutionやTeenage Walkが収録されている。蛇足であるが、この写真は冒頭にも書いたように歌詞カードに載っているのであるから「このアルバムを買わなければ」見ることはできない。カメラが好きでもそのためにこのアルバムを買う人はいないと思うのだが・・・もっともいったん発売されると余程売れない限り追加製造はしないのでかなり以前発売されたこのアルバムが現在すぐ手に入るという補償もないのである。

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