灰 桜(はいざくら)
桜色の灰みがかった色をいう。明度の高いソフトな感じの色で,これより明度が低くなると桜ねずの名がある。
〔参考〕桜鼠(さくらねず)N-948

(DIC株式会社/DIC color guide「日本の伝統色」より N-831)

これまでの背景色(2024年1月~)

3月:鶸萌葱(ひわもえぎ) N-831 鶸萌葱(ひわもえぎ)
鶸色(ひわいろ)よりも緑みによった色で,萌葱色(もえぎいろ)との中間の色をいう。ことばのひびきがことさら美しい色である。
〔参考〕鶸色(ひわいろ)N-830、萌葱色(もえぎいろ)N-832
2月:鶯茶(うぐいすちゃ) N-814 鶯 茶(うぐいすちゃ)
鶯色の茶がかった色をいう。緑みがかった茶色といってよいが,日本の茶色は英語圏のブラウンより黄みによっているようだが,その系統はここではオリーブ系統としている。
〔参考〕鶯色(うぐいすいろ)N-818
1月:薄香色(うすこういろ) N-780 薄香色(うすこういろ)
香色の更にうすい色をいう。そこはかとなくただよう丁字(ちょうじ)の香りのように,あるかなしかのかすかな色みをもっている。
12月:納戸鼠(なんどねず) N-867 納戸鼠(なんどねず)
錆納戸より更にくすんで,わずかに納戸かかった鼠色をいう。藍色,納戸色,錆納戸,納戸鼠の順にサイドが低い色になる。
〔参考〕藍色(あいいろ)N-889、納戸色(なんどいろ)N-885、錆納戸(さびなんど)N-866
11月:滅赤(けしあか) N-730 滅 赤(けしあか)
赤みのずっと弱い灰みがかった赤をいう。伝統色名では,色みの弱まった色に錆(さび),鈍(にぶ),滅(けし),などの形容詞がつくものがある。
10月:銀煤竹(ぎんすすたけ) N-976 銀煤竹(ぎんすすたけ)
煤竹という色名は古くからある。竹製品が煤けて古色をおびた色であるが,それのやや明るめの色を銀煤竹といった。銀は白みの形容である。
9月:葡萄色(えびいろ) N-927 葡萄色(えびいろ)
葡萄色(えびいろ)は野生のえびかずらの実からきた色名だが,ぶどう色と同じとみてよい。蘇芳と藍で染めた色を贋紫(にせむらさき)といったが,葡萄色は下位服色とされていたから贋紫であったかもしれない。
8月:深緑(ふかみどり) N-848 深 緑(ふかみどり)
深い感じの濃い緑の色をいう。絵の具にビリジャン(viridian)という透明性のある絵の具がある。この色も深緑といってよい。伝統色名の深緑は藍と刈安で染めた色でこれほど彩度の高い色はでない。
7月:瑠璃色(るりいろ)ラピスラズリ— N-891 瑠璃色(るりいろ)ラピスラズリ—
瑠璃(るり)は天然ウルトラマリンの原鉱石であるラピスラズリ(lapis lazuli)をいい,昔から七宝のひとつとして珍重された。その色からきた色名である。
6月:豌豆緑(ピー グリーン) N-836 豌豆緑(ピー グリーン)
ピー グリーン(pea green)は英語圏では慣用されている色名で,豌豆のさやの中に並ぶかわい豆つぶの色からきた名である。豌豆緑はその訳名である。
5月:萌葱色(もえぎいろ) N-832 萌葱色(もえぎいろ)
萌葱色(もえぎいろ)は萌えでる葱の芽の色からきた色名で古くからある。萌黄色とも,萌木色とも書くことがある。
4月:ベビー ピンク N-705 ベビー ピンク
乳幼児の服色に常用されているのでこの名がある。うすいピンクはそのソフトな色調が幼児のやわ肌を包むのにふさわしい。
3月:鬱金色(うこんいろ) N-795 鬱金色(うこんいろ)
鬱金(うこん)はショウガ科の多年草で,その根茎を粉にして染料とする。それで染めた色をいい,たくあんなど食品の着色にも用いられた。
2月:利休白茶(りきゅしらちゃ) N-812 利休白茶(りきゅうしらちゃ)
利休茶道で葉茶を利休と呼ぶことから,利休は緑みを形容する意味があり,利休白茶は緑みをおびた白茶をいう。
1月:狐色(きつねいろ) N-768 狐 色(きつねいろ)
狐の体毛のような色をいう。狐色に焦がすなどというが一般の人が日常何げなく使っている言葉にも色ことばはあるものである。
12月:半色(はしたいろ) N-922 半 色(はしたいろ)
中古の服色には緋や紫のように禁色とされた色があったが,それらの色相でも浅い調子の色にすれば許色(ゆるしいろ)とされた。半色はその程度の浅い色をいう。濃色(こきいろ)薄色と同じく半色も主に紫系にいう。
11月:海老茶(えびちゃ) N-755 海老茶(えびちゃ)
伊勢海老(いせえび)の色に似た暗い赤みの茶色をいう。明治になって女子学生や女教員の間に袴(はかま)をはく風俗があらわれるが,その袴の色にこの色が多く用いられた。
10月:カーキー色 N-799 カーキー色(カーキ)
日露戦争当時日本の陸軍の制服の色に定められた色。その後の世界大戦から迷彩の考えが発展して,この色より色相が緑みによった色を各国の軍隊は採用した。
9月:洗朱(あらいしゅ) N-712 洗 朱(あらいしゅ)
朱色のうすい色,朱色を洗ってもうすくはならないが,この名は明治の頃から和装の色に流行した,その色につけられた。イメージをいい表わす名としては当時しゃれたいいまわしである。
8月:墨色(すみいろ) N-960 墨 色(すみいろ)
書画に用いる墨(すみ)の色をいう。墨には唐墨のように青みをもつものと,和墨のように茶みをもつものとがある。
7月:ベビー ブルー N-870 ベビー ブルー
ベビーブルー(baby blue)はソフトな感じの空色系の色で,乳幼児の服色としてベビーピンクとともに常用されているところから,この名が一般に慣用されている。(12月誕生色)
6月:モーブ N-919 モーブ
モーブ(mauve)は最初の合成染料につけられた色名。1856年,若き化学者パーキンがコールタールから紫色の染料を合成した。モーブの名はフランス名であり,英名はマロ—(marrow)でゼニアオイ科の花の色である。
5月:カナリヤ色 N-807 カナリヤ色
カナリヤの羽毛に見る黄色をいう。英名はカナリー(canary)である。カナリアの色も今はいろいろな色があるけれども,原種の色はこのような黄色であった。
4月:銀鼠(ぎんねず)N-947 銀 鼠(ぎんねず)
銀は独特の銀光沢をもっているが,色名としての銀鼠は光沢は別にして,銀は明るい色の形容であるから,明るいグレイをいう。英名ではシルバーグレイ(silver gray)である。
3月:裏葉色(うらはいろ)N-855 裏葉色(うらはいろ)
樹の種類によって葉の裏が表と違って白っぽいものがあり,葛(くず)の葉裏などは特に白い。王朝人の繊細な感受性が葉裏にまで注目してこのような色名を生みだした。
2月:梅紫(うめむらさき)N-940 梅 紫(うめむらさき)
梅紫の梅は紅梅の赤紫みの形容としてつけられている。ややにぶい調子の赤紫をいう。
1月:朱華(はねず)N-961 朱 華(はねず)
日本書紀に「朱花,これをはねずという」とある。また萬葉集の中にもはねずを詠んだ歌があり,はねずは飛鳥時代から高貴の人の肌色の色として用いられた。
12月:威光茶(いこうちゃ)N-990 威光茶(いこうちゃ)
茶(ブラウン)という色の範囲からはずれてこのように緑がかった色を茶と呼ぶのは,日本では茶道のお茶の色からきているのであろう。柳茶,鶸茶(ひわちゃ)などと呼ばれる色と同類の色である。
〔参考〕鶸茶(ひわちゃ)N-815
11月:枯葉色(かれはいろ)N-771 枯葉色(かれはいろ)
枯葉のような黄みの茶色,晩秋を想わせる色である。フランス色名にカフェオーレ(café au lait),ミルクコーヒーの色があるが,大体この色に近い。
10月:孔雀緑(ピーコック グリーン)N-863 孔雀緑(ピーコック グリーン)
孔雀(くじゃく)の羽根には緑から青,青紫までの色が見られるが,そのなかのさえた緑色をピーコックグリーン(peacock green)という。孔雀緑はその訳名である。
9月:浅葱鼠(あさぎねず)N-879 浅葱鼠(あさぎねず)
錆浅葱(さびあさぎ)より更に彩度が低く,わずかに浅葱がかった灰色に近い色をいう。
〔参考〕錆浅葱(さびあさぎ)N-865
8月:納戸色(なんどいろ)N-885 納戸色(なんどいろ)
納戸色の名は藍染が大衆化した江戸時代に生まれた色名である。藍染めの布を納戸に貯える,納戸は物をしまっておく部屋だから暗い,そんなイメージからこの色名は生まれた。その点からいって決して彩度の高い色ではない。
7月:藤 鼠(ふじねず)N-913 藤 鼠(ふじねず)
藤色の灰みがかった色をいう。英名ではラベンダーグレイ(lavender gray)がこれに当る。
6月:菜の花色(なのはないろ)N-808 葉の花色(なのはないろ)
一面に咲く菜の花畑に見るやや緑みをおびた黄色をいう。菜の花畑は花と葉の色が細かい点で並び混って見られるから緑みがかった黄色に見える。
5月:山葵色(わさびいろ)N-849 山葵色(わさびいろ)
山葵(わさび)は清流にしか育たない。その根を食用に供するが,この色名が実際の色よりも青みにイメージされるのは,その育つ清らかな環境のせいか,またはその味の爽やかな辛みのせいかもしれない。
4月:牡丹色(ぼたんいろ)N-934 牡丹色(ぼたんいろ)
牡丹の花に見る鮮やかな赤紫をいう。当時輸入された化学染料を使いはじめた明治後期の染織品の,彩度の高い華やかな感じのこの色感が珍らしがられたことであったろう。
3月:錆桔梗(さびききょう)N-910 錆桔梗(さびききょう)
桔梗色の彩度の低いにぶい調子の青紫系をいう。錆(さび)は赤錆の意味ではなく,彩度の低い色の形容として用いられている。
2月:濃縹(こきはなだ)N-897 濃 縹(こきはなだ)
縹色(はなだいろ)の濃い色をいう。藍染めの代表的な色だから,藍色(あいいろ)と言ってもよい。
1月:二藍(ふたあい)N-911 二 藍(ふたあい)
紅花は昔の中国呉(くれ)から伝来したことから呉藍(くれあい)といい,それが(くれない)となったのだが,この紅と藍とで染めた色を二藍(ふたあい)と言った。
12月:石板色(せきばんいろ)N-957 石板色(せきばんいろ)
石板色はスレート グレー(slate gray)の訳名で,石板の色に見る暗いグレイをいう。
11月:憲法色(けんぽういろ)N-778 憲法色(けんぽういろ)
憲房色(けんぽういろ)ともいう。吉岡憲房という剣術士が着はじめたことからこの名がある。英名ではセピア(sepia)がこれに当る。セピアは烏賊(いか)の墨からつくった絵の具の名である。
10月:桑染(くわぞめ)N-984 桑染(くわぞめ)
桑の根または木の皮を灰汁媒染によって染めた色で,これと似た桑染の色に桑色,桑色白茶の名もある。
〔参考〕桑色(くわいろ)N-796
9月:柿渋色(かきしぶいろ)N-751 柿渋色(かきしぶいろ)
柿の渋はタンニンを含んでいてこれで染めると赤みの茶になる。柿の渋を塗った渋紙に見るような色をいう。
8月:縹色(はなだいろ)N-896 縹 色(はなだいろ)
縹(はなだ)色名は非常に古くからあった。藍だけで染めた色の伝統色名は縹色(はなだいろ)と言った。その濃淡にたって深縹,次縹,中縹,浅縹と分けていた。
〔参考〕中縹(なかはなだ)N-994、浅縹(あさはなだ)N-884
7月:淡群青(うすぐんじょう)N-895 淡群青(うすぐんじょう)
群青(ぐんじょう)の粒子を細かくしてややうすくなった色をいう。これよりもっと粒子を細かくして白っぽくした色が白群(びゃくぐん)である。
〔参考〕群青色(ぐんじょういろ)N-892、白群(びゃくぐん)N-876
6月:萱草色(かぞういろ)N-742 萱草色(かぞういろ)
萱草(かんぞう)の花のような明るい黄みのオレンジを言う。襲の色目(かさねのいろめ)に出てくる伝統色名では(かぞういろ)と読んでいる。
5月:千歳茶(せんざいちゃ)N-813 千歳茶(せんざいちゃ)
緑みがかった茶の暗い色をいう。仙斉茶(せんざいちゃ)とも書く。松の古木に見るような暗くて枯れた感じの色である。
4月:シェル ピンク N-706 シェル ピンク
貝類の殻の色からきた色名,桜貝などもう少し赤みによったものもあるが,貝類の殻の内部は一般にこの程度のうすい黄みのピンクが多い。
3月:白群(びゃくぐん)N-876 白 群(びゃくぐん)
日本画の絵の具の白群(びゃくぐん)は群青(ぐんじょう)の顔料の粒子を非常に細かくした白っぽい色をいう。
〔参考〕群青色(ぐんじょういろ)N-892
2月:チョコレート色 N-757 チョコレート色
チョコレート(chocolate)のような暗い茶をいう。フランス名ではショコラ(choclat)という。
1月:ぶどう鼠(ぶどうねず)N-915 ぶどう鼠(ぶどうねず)
ぶどうの実の表皮には粉をふいたように灰みの色が見られるが,そのような葡萄色(ぶどういろ)の鼠がかった色をいう。
12月:コルク色 N-741 コルク色
ワインの瓶などの栓に用いられているコルクからきた色名で,色もそのコルク質のようにソフトで軽やかな感じがある。
11月:黒緑(くろみどり)N-859 黒 緑(くろみどり)
ほとんど黒に近い緑をいう。フォレストグリーン(forest green),ジャングルグリーン(jungle green)など暗い森林の色をいう英名がある。
10月:緋色(ひいろ)N-723 緋 色(ひいろ)
平安前期までの緋という色は日本茜で染めた色である。平安中期以降に鬱金(うこん)などの黄色の下染めに紅花をかける方法が用いられた。
〔参考〕鬱金色(うこんいろ)N-795
9月:赤香色(あかごういろ)N-779 赤香色(あかごういろ)
丁字(ちょうじ)の木の煎汁でうすく染めた色を香色という。それに赤みをさした色を赤香色と言った。古代は赤を丹(に)といい,匂う(におう)は色がほんのり赤みをさすことを言った。赤香色はまさに匂う色である。
〔参考〕香色(こういろ)N-783
8月:とうもろこし色 N-791 とうもろこし色
とうもろこしの実の色に見る色をいう。英名ではメイズ(maize)といい,アメリカ色名はゴールデンコーン(golden corn)といい,いかにも豊かな収穫のイメージが伝わってくる。
7月:コバルト ブルー N-890 コバルト ブルー
輝コバルト鉱からとるアルミン酸コバルトの顔料で,今は有機合成化学の発達によりあらゆる色相に鮮明な色が出せるが,コバルトブルー(cobalt blue)は,無機化学の成果による無機顔料の色からきた色名である。
6月:真朱(しんしゅ)N-971 真朱(しんしゅ)
今日いう朱色は水銀を原料とする人造の銀朱であるのに対し,天然に産する朱砂を真朱として区別した。銀朱よりくすんだやや紫みの色である。
5月:群青色(ぐんじょういろ)N-892 群青色(ぐんじょういろ)
ウルトラマリン(ultoramarine)で,藍銅鉱から採る鉱物顔料の色。日本画の絵の具にもある。人工の群青もあり,アートウルトラマリン(art ultramarine)という。
4月:浅緋(うすあけ)N-714 浅 緋(うすあけ)
奈良朝時代に大宝令,平安時代に延喜式が制定され,そのなかで位階による服色の制度がきめられた。それによれば緋(ひ)を(あけ)と読み,これのうすい色を浅緋(うすあけ),濃い色を(ふかきあけ)といった。
3月:若葉色(わかばいろ)N-828 若葉色(わかばいろ)
萌えでた若葉の茂みが陽光を受けて,それを逆光から透して見たときの色は,ことのほかみずみずしい感じであるが,そのような色をいう。
2月:消炭色(けしずみいろ)N-958 消炭色(けしずみいろ)
昔は炭火をよく使ったものだがその消炭の色。日常身近のものから適切な色名をとりだしてくる日本人の繊細な感受性をここにみる。英名のチャーコールグレイ(charcoal gray)がこれに当る。
1月:草色(くさいろ)N-834 草 色(くさいろ)
草の色のような濃い黄緑をいう。英名でもグラス グリーン(grass green)である。植物の緑はほとんど色相は黄緑の系統であって,青みの緑や青緑のものはない。古い伝統色名の緑はこの程度の色であった。
12月:菜種色(なたねいろ)N-810 菜種色(なたねいろ)
菜種の色,または菜種油の色とする説もあり,いずれにしてもそう違う色ではない。
11月:灰青(はいあお)N-900 灰 青(はいあお)
灰みかかった青系の色の範囲をいう。無彩色に近い色に灰の形容をつける呼びかたは比較的最近のことで,伝統色名では鼠(ねず)を形容語に用いることが多かった。
10月:栗皮色(くりかわいろ)N-762 栗皮色(くりかわいろ)
栗の実の固い皮の色からきた色名であって,栗色とも言うが,皂色(くりいろ)という別の色名もあることから,混同されないように栗皮色といった。英名にはチェスナットブラウン(chestnut brown)がある。
9月:威光茶(いこうちゃ)N-990 威光茶(いこうちゃ)
茶(ブラウン)という色の範囲からはずれてこのように緑がかった色を茶と呼ぶのは,日本では茶道のお茶の色からきているのであろう。柳茶,鶸茶などと呼ばれる色と同類の色である。
〔参考〕鶸茶(ひわちゃ)N-815
8月:濃色(こいろ)N-1000 濃色(こいろ)
今日では濃い,うすいはすべての色相につく形容詞であるが,平安時代には紫が色の代表のようなものだったから特に紫系に対して用いられていた。濃紫と書いて,こきいろともいう。
7月:熨斗目色(のしめいろ)N-996 熨斗目色(のしめいろ)
熨斗目は江戸時代に士分以上の者の礼服として裃(かみしも)の下に着た小袖で,袖の下部身頃に横位置に縞や格子の織模様をいう。この熨斗目に用いられた藍色を熨斗目色という。
6月:楝(おうち)N-998 楝(おうち)
楝は栴檀(せんだん)の古称で,その花の色からきた色名で古くからある色名である。栴檀はせんだん科の落葉きょう木。四月頃,淡紫色または白色の花を開く。果実は条虫駆除剤としても用いられた。
5月:丁字色(ちょうじいろ)N-746 丁字色(ちょうじいろ)
丁字(ちょうじ)は沈丁花(じんちょうげ)に似た木のことで,その木を煎じた汁で染めた色をいい,濃く染めた色が丁字茶,媒染なしでうすく染めた色を香色(こういろ)と言った。
〔参考〕香色(こういろ)N-783
4月:苺色(いちごいろ)N-938 苺 色(いちごいろ)
苺の熟した実に見る赤紫をいう。英名はストロベリーレッド(strawbery red)である。
3月:錆青磁(さびせいじ)N-856 錆青磁(さびせいじ)
錆(さび)は色がしぶくくすむことの形容であって,青磁色のくすんだ色をいう。
〔参考〕青磁色(せいじいろ)N-842
2月:紅藤(べにふじ)N-918 紅 藤(べにふじ)
明治・大正時代に流行した,藤色の赤みがかった色をいう。ライラックの花の色と大差のない色である。
〔参考〕藤色(ふじいろ)N-905
1月:香櫞緑(シトロン グリーン)N-833 香櫞緑(シトロン グリーン)
シトロンの未熟な実の色からきたシトロングリーン(citron green)で,香櫞緑はその訳名であるが,明治時代は外来語にこういった漢語調の訳をすることがよくあった。
12月:菖蒲色(そうぶいろ)N-921 菖蒲色(そうぶいろ)
花菖蒲(はなしょうぶ)に見る紫,伝統色名ではこれを(そうぶ)と呼んだ。あやめ,しょうぶは端午の節句を飾る色で,菖蒲重ねはこの節句の祝儀に用いられた。
11月:黄蘗色(きはだいろ)N-803 黄蘗色(きはだいろ)
黄蘗(きはだ)の樹の内皮を染料とするが,鮮やかな黄色に染まり,堅牢度も高いから黄色みを出すための下染めとして用いられることもあった。
10月:代赭色(たいしゃいろ)N-761 代赭色(たいしゃいろ)
土の成分によって色は多少違ってくるが弁柄とほぼ同じものであり,代赭(たいしゃ)の名は,中国の代州産の赤土の赭(しゃ)が有名であったので,そこからきた色名である。
〔参考〕弁柄色(べんがらいろ)N-753
9月:海松茶(みるちゃ)N-817 海松茶(みるちゃ)
海松色(みるいろ)の茶がかった色をいう。媚茶(こびちゃ)もこれと似た色で,オリーブの系統に入る色である。
〔参考〕海松色(みるいろ)N-819、媚茶(こびちゃ)N-982
8月:人参色(にんじんいろ)N-733 人参色(にんじんいろ)
英名のキャロットオレンジ(carrot orange)の人参色は赤身のオレンジ系の色である。鬼ゆりの花の色タイガーリリー(tiger lily)もこの色に近い。
7月:瓶覗(かめのぞき)N-995 瓶覗(かめのぞき)
藍染のもっとも淡い色で, あい がめ を覗いた程度にちょっと染めたという意味からきた色名である。覗色(のぞきいろ)ともいい,白藍色(びゃくらんいろ)も同系色である。
6月:卵色(たまごいろ)N-792 卵 色(たまごいろ)
鶏卵の黄味のような赤みの黄色をいう。飼料によって卵の黄味の色は違ってくるが,大体赤みの黄色である。
5月:鸚鵡緑(パロットグリーン)N-846 鸚鵡緑(パロット グリーン)
おうむのパロット(parrot)の羽毛に見られる鮮やかな緑をいう。訳名として鸚緑(おうりょく)の名がある。明治初期刊行の文部省刊色図にこの名がある。
4月:薄紅藤(うすべにふじ)N-916 薄紅藤(うすべにふじ)
藤色の赤みがかった色を紅藤というが,それのさらにうすい色をいう。英名ではペールライラック(Pale lilac)がこれに当る。
〔参考〕藤色(ふじいろ)N-905、紅藤(べにふじ)N-918
3月:淡水色(うすみずいろ)N-871 淡水色(うすみずいろ)
水色のうすい色をいう。古い貴族時代は濃い色ほど高位の色とされ,権力と経済力の象徴となっていたが,鎌倉時代以降に色彩が庶民に開放されるようになってから,いろいろな調子の色がでてくるようになった。
〔参考〕水色(みずいろ)N-872
2月:濃紫(こきむらさき)N-929 濃 紫(こきむらさき)
日本書紀によれば大化の改新後に7色13階の冠の制ができ,その最高位に深紫(ふかきむらさき)が挙げられている。それ以来紫は諸臣の服色の最高位をしめていた。濃紫を単に濃色(こきいろ)といった。
1月:クリーム N-788 クリーム
クリーム(cream)の白っぽい黄色で,この色名は一般に慣用されている。フランス名ではクレーム(crème)という。
12月:錆浅葱(さびあさぎ)N-865 錆浅葱(さびあさぎ)
浅葱色の彩度の低い色をいう。浅葱色,錆浅葱,浅葱ねず,深川ねずと彩度の低くなる順に色名も替えている。このような色の調子の変化に応じた色名を生みだす感覚はやはり日本人の細やかな感受性を示していよう。
〔参考〕浅葱色(あさぎいろ)N881、浅葱鼠(あさぎねず)N-879、深川鼠(ふかがわねず)N-949
11月:灰汁色(あくいろ)N-951 灰汁色(あくいろ)
灰汁色は草木染めの媒染材として用いられる灰汁(あく)からきた色で,これも黄茶の色みをもったグレイに近い色である。英名では,アッシュグレイ(ash gray)である。
10月:山吹茶(やまぶきちゃ)N-750 山吹茶(やまぶきちゃ)
黄金色(こがねいろ)の名もあり,代表的なゴールド系の色である。金色というと,金光沢をもつ本物の金の色になるが,色名としてのゴールドは光沢は別にして,その色だけを言っている。
9月:山鳩色(やまばといろ)N-822 山鳩色(やまばといろ)
山鳩の羽毛の色からきた色名であり,別名に麹塵(きくじん),青白橡(あおしろつるばみ)の名があり,この染め色はメタメリック現象で色が緑から紫まで変化する。天皇の平時の袍の色とされ,禁色とされていた。
8月:鉄紺(てつこん)N-898 鉄 紺(てつこん)
鉄色と紺色の中間の暗い緑みの青をいう。紺は紫みの青だが鉄紺と言えば緑みをおびた色をさす。活色(かついろ),勝色(かちいろ)の名がある。
7月:ラベンダー(ライト バイオレット)N-904 ラベンダー(ライト バイオレット)
ラベンダー(lavender)はシソ科の植物で,芳香のあるその花のようなうす青紫をいう。フランス名はラバンド(lavande)という。
6月:黄水仙(きすいせん)N-802 黄水仙(きすいせん)
水仙の花に見る明るい黄色をいう。英名ではダフォディルイエロー(daffodil yellow),フランス名ではジョンキル(jonquille)という。
5月:木賊色(とくさいろ)N-852 木賊色(とくさいろ)
木賊色(とくさいろ)も古い色名である。シダ類の木賊は茎が固く,これでこすって木面などをなめらかにするのに使われた。その茎の色からきた色名である。
4月:つつじ色 N-935 つつじ色
つつじの花に見る赤紫をいう。このように鮮やかな色は昔は表し得なかっただろうが,躑躅(つつじ)重ねがある。これは表が紅梅,裏が青(緑)とあるが対照的な配色でこういう重ねは藤原時代のものであろう。
〔参考〕紅梅色(こうばいいろ)N-701
3月:古代紫(こだいむらさき)N-925 古代紫(こだいむらさき)
紫草の根を材料として染める紫は,今日の合成染料による彩度の高い紫は望むべくもなかった。今日の紫に対比して,昔のにぶい調子の色を古代紫といった。京紫も同じような色である。
2月:紺鼠(こんねず)N-902 紺鼠(こんねず)
鼠色に紺色がかった彩度の低い色をいう。藍鼠と似ているが,それよりやや暗く紫みがかっている。
〔参考〕紅梅色(こうばいいろ)N-701
1月:濃藍(こいあい)N-894 濃藍(こいあい)
藍染めの濃い色をいう。藍を濃く染めると色相は紫みに傾くが,これよりもっと濃く紫みがかれば紺色となる。インド原産の藍のインディゴ(indigo)は紀元前から染色に使われていて,あらゆる民族の青の基本色をつくった。
12月:黒紫(くろむらさき)N-933 黒紫(くろむらさき)
紫根で染めた紫は重ね染めを幾度か行なっていると黒みをおびて深紫(ふかきむらさき)となる。これを黒紫とも言った。
11月:深支子(こきくちなし)N-798 深支子(こきくちなし)
支子(くちなし)の実から採る黄色色素で濃く染め,紅染めを上がけして,やや赤みにした色をいう。この色名は延喜式の中にもある。
10月:しゅろ N-765 しゅろ色
棕櫚(しゅろ)の毛のような灰みの茶をいう。明治初期に刊行された文部省刊色図で茶系の低彩度な色をいうのにこの名がある。
9月:そひ N-744 そひ
延喜式にある そひ は素緋(そひ)で緋のうすい色をいった。茜根の灰汁媒染で染めた色である。
8月:紫根色(しこんいろ)N-942 紫根色(しこんいろ)
紫草の根に含まれている色素はそのままでは赤みを呈している。これで染めて乾燥すると深い紫になる。紫根の色素は揮発性をもっており,傍にあるものに色を移し染まるので,この色はゆかりの色とされている。
7月:紺碧(こんぺき)N-888 紺碧(こんぺき)
紺碧の空などといい鮮やかな青を形容した言葉である。碧(へき)は碧石の青緑色からきている。この場合の紺はむしろ語感を強めるのにそえられたのであって,鮮明な緑みの青を言ったものである。
6月:木蘭色(もくらんじき)N-964 木蘭色(もくらんじき)
大宝衣服令に木橡(きつるばみ)の名があり,木欄色(もくらんじき)はこの木橡と同じとされた。印度などに産する植物のミノバランで染めた色を云った。
5月:緑青(ろくしょう)N-850 緑青(ろくしょう)
日本画の絵の具の緑青(ろくしょう)は奈良朝の時代に中国から伝来した。古い建造物の銅葺きの屋根や,青銅の古い記念像などは,長い年月の間に酸化して緑青を生じ,美しい緑青色を呈するようになる。(6月の誕生色)
4月:長春色(オールド ローズ)N-717 長春色(オールド ローズ)
英名のオールドローズ(old rose)はローズのにぶい調子の色をいう。彩度が低くなってにぶい調子になる色に英名ではoldの形容詞をつけて呼ぶことがある。この色は大正時代に流行し,長春色の名を当てた。
3月:ねこやなぎ色(サロー)N-825 ねこやなぎ色(サロー)
ねこやなぎのソフトな感触と色は,見る人の心をとらえるが,なんという色名で呼べばふさわしいかをさがしたらサロー(sallow)という英名があった。それがねこやなぎのことをいう語でもあった。
2月:緋褪色(ひざめいろ)N-728 緋褪色(ひざめいろ)
緋色のあせたような,にぶい調子の赤系の色をいう。古代から赤には厄除けの信仰があった。鮮やかな赤でなくとも厄除け効果を期待して赤色が使われた。
1月:灰白(はいじろ)N-946 灰白(はいじろ)
灰みがかった白をいう。霜のような白のフロスティホワイト(frosty white),真珠のような白のパールホワイト(pearl white)の名がある。
12月:茄子紺(なすこん)N-912 茄子紺(なすこん)
茄子の実の表皮の色からきた色名で,紺色より紫によった暗い青紫をいう。紫紺(しこん)ともいう。この色名は大正時代に生まれた。
11月:朱色(しゅいろ)N-731 朱色(しゅいろ)
朱という色名が染織に使われたのは昭和の初めであり,英名のバーミリオン(vermilion)にあたる。バーミリオンは人工の朱色顔料の名である。天然の朱は辰砂から採る顔料で,もっと紫みをもった,くすんだ色である。(11月の誕生色)
10月:枯草色(かれくさいろ)N-797 枯草色(かれくさいろ)
枯草のようなにぶい赤みの黄色をいう。すすきやかやの群生するところは秋になると一面この色におおわれる。襲の色目(かさねのいろめ)に枯色の名がある。表が薄香,裏が青(緑)とされていた。
9月:小豆色(あずきいろ)N-729 小豆色(あずきいろ)
赤小豆のような色をいう。英名にはラセットブラウン(russet brown)の名がある。日本で祝儀のときに赤飯をたくのも厄除けの意味があったようである。
8月:唐紅花(からくれない)N-722 唐紅花(からくれない)
延喜式に準拠して染めると完全な紅の色素だけの色になる。紅花に含まれる黄色色素を除去するため一旦麩に染めつけたものをアルカリで再度抽出して,改めて絹に染めなおすという,二度の手間をふんだ染め色である。紅染めは高価なもので高貴な色とされた。
7月:プラム N-941 プラム
プラム(plam)は西洋すももの色に見る暗い赤紫をいう。それより彩度の高い色に紫水晶のアメシスト(amethyst)の名がある。(5月誕生色)
6月:水浅葱(みずあさぎ)N-861 水浅葱(みずあさぎ)
水浅葱(みずあさぎ)も浅葱のうすい色をいうが,薄浅葱よりやや鮮明である。このような鮮明な色が出てくるのは合成染料が輸入されてた明治中期以降のことである。
〔参考〕浅葱色(あさぎいろ)N-881、薄浅葱(うすあさぎ)N-860
5月:若芽色(わかめいろ)N-826 若芽色(わかめいろ)
若芽のようなソフトな黄緑色をいう。英名ではスプロウト(sprout)があり,フランス名ではブールジョン(bourgeon)という。
4月:青藤(あおふじ)N-878 青藤(あおふじ)
藤色がかった紫みの青のうすい色をいう。英名で言えばラベンダーブルー(lavender blue)といえよう。
〔参考〕藤色(ふじいろ)N-905
3月:若紫(わかむらさき)N-923 若紫(わかむらさき)
若の形容は明るく新鮮なイメージを言ったものだから,若紫は明るい紫をいう。昔の草木染めではこれだけの彩度は出そうもない色である。
2月:花浅葱(はなあさぎ)N-886 花浅葱(はなあさぎ)
花色は露草の色であり,それと浅葱色との中間の色を花浅葱(はなあさぎ)と言った。これもことばのひびきの美しい色名である。
〔参考〕露草色(つゆくさいろ)N-887、浅葱色(あさぎいろ)N-881
1月:紅梅色(こうばいいろ)N-701 紅梅色(こうばいいろ)
紅梅の花の色からきた色名,平安時代の王朝人は重ね着の衣装の配色を自然の風物の色から採り入れ,それに草花などの名をとって襲(かさ)ねの色目の名としたが,紅梅重ねは表紅梅色,裏蘇芳とある。
〔参考〕蘇枋色(すおういろ)N-720
12月:ベージュ N-784 ベージュ
ベージュ(beige)は晒さない羊毛のそのままの色からきた色名で,もともとはフランス名である。日本でもこの名はピンクと同様に一般化して,生成り(きなり)の色の範囲を総称する名として慣用されている。
11月:抹茶色(まっちゃいろ)N-838 抹茶色(まっちゃいろ)
茶道で用いる抹茶のようなやわらかな感じの黄緑をいう。これはブラウンの茶色ではない。ソフト感覚が流行するときにはこの色も出てくる。
10月:芥子色(からしいろ)N-811 芥子色(からしいろ)
芥子菜の種子を粉末にして香辛料とするが、その芥子からきた色名である。英名はマスタード(mustard)である。フランス色名にカリー(cari)の名があるが、これはカレー粉の色である。
9月:青磁色(せいじいろ)N-842 青磁色(せいじいろ)
平安時代に中国から青磁という磁器が伝来した。青磁の発色には黄み,青みや,濃・淡の色の巾があり,普通青磁色は砧青磁(きぬたせいじ)と言われるものの白みをもった緑色を言った。。
8月:蜜柑茶(みかんちゃ)N-738 蜜柑茶(みかんちゃ)
蜜柑色(みかんいろ)の茶がかった色をいう。大正の頃から大衆の間で言われだした色名のようである。
7月:シアン ブルー N-882 シアン ブルー
シアンブルー(cyan blue)はマゼンタ,イエローとともに色料の三原色に選ばれている鮮やかな緑みの青で,原色版印刷の青版にはこの色相のインキが使われる。
6月:黄土色(おうどいろ オーカー)N-749 黄土色(おうどいろ オーカー)
無水珪酸,アルミニゥム,酸化第2鉄を含む黄色っぽい天然の土をオーカー(ochre)といい,顔料として古くから用いられた。その色を黄土色という。黄みがかった黄土色のイエローオーカーは絵の具の色として知られている。
5月:エメラルドグリーン N-844 エメラルド グリーン
宝石のエメラルド(emerald)のような澄んだ鮮やかな緑をいう。フランス名ではヴェルエメロード(vert emeraude)という。
4月:サックスブルー N-874 サックスブルー
サックスブルー(saxe blue)はサキソニーブルーという酸性染料で染めた色をいい,この染色ではあまり濃い色は得られない。
3月:たんぽぽ色 N-805 たんぽぽ色
たんぽぽの花に見る鮮やかな黄色で,大体黄色の中心に近い色である。英名ではダンディライアン(dandelion)という。
2月:松葉色(まつばいろ)N-851 松葉色(まつばいろ)
松葉の色に見る緑をいう。襲(かさ)ねの色目の松重ね,安土桃山時代の大障屏画の松の緑,能舞台の松の緑など,松葉色は日本の伝統的色彩のひとつであろう。
1月:猩々緋(しょうじょうひ)N-724 猩々緋(しょうじょうひ)
ケルメス(かいがら虫)から採った色素で染めた。南蛮渡来の毛氈(もうせん)の色にこの名がつけられたのは江戸時代の初期であった。
12月:橙色(だいだいいろ)N-736 橙色(だいだいいろ)
オレンジの果実の表皮に見る色で,英名ではオレンジピール(orange peel)の名がある。橙はオレンジの訳名だが,今は橙というよりオレンジとそのまま言った方が通りがよい。
11月:海松色(みるいろ)N-819 海松色(みるいろ)
浅海の岩石に着生する緑藻(みどりも)の海松(みる)からきた色名である。海松の形を図案化した模様は平安時代のものにも残っている。
10月:藍色(あいいろ)N-889 藍色(あいいろ)
藍色がこのような青系の色目に定着してきたのは,藍染めの技法が発達してきた江戸時代以降のことであった。これが現在に伝承されている藍色といってよかろう。中古以前は山藍の摺染めの緑色を藍色としていて,延喜式でも藍草と黄蘗で染めた緑系の色を深藍色,中藍色,浅藍色としていた。中古以前は緑系の色目であった。
9月:鶸色(ひわいろ)N-830 鶸色(ひわいろ)
鶸の羽毛からきた色名。実際に鶸の色はこれほどきれいな色ではないかもしれないが,色名は記憶されるイメージからくるものだから,きれいな方向に強調されることもある。
8月:桑の実色(くわのみいろ)N-928 桑の実色(くわのみいろ)
桑の実の色からきた暗い紫をいう。桑の実は野趣のある味で食べられる。桑の木は草木染の材料となるが,その染め色は紫ではない。
7月:孔雀青(ピーコック ブルー)N-883 孔雀青(ピーコック ブルー)
ピーコック ブルー(peacock blue)は孔雀の羽根の中に見るさえた青をいう。孔雀青はその訳名である。
6月:レモンイエロー N-806 レモン色(レモンイエロー)
レモンの表皮に見るやや緑みがかった黄色をいう。黄色のなかでは爽やかな感じのする色である。レモンイエロー(lemon yellow)は絵の具の色でもなじみぶかい。明治の時代はこれに檸檬(ねいもう)色と訳名を当てた。
5月:千歳緑(せんざいみどり)N-853 千歳緑(せんざいみどり)
常磐緑(ときわみどり)と同じく常緑の樹の色からきた色名だが,古木の更に暗い緑を言ったものであろう。
〔参考〕常盤緑(ときわみどり)N-847
4月:薄紅(うすべに)N-716 薄紅(うすべに)
紅染めのうすい色をいう。退紅(たいこう)という名もある。退紅はまた粗染(あらぞめ)ともいう。紅染めの色が禁色とされていた時代にも,この程度のうすい色は許色(ゆるしいろ)で使うことができた。
3月:鳥の子色(とりのこいろ)N-787 鳥の子色(とりのこいろ)
鳥の子という和紙がある。そのような白に近い色をいう。英名には卵の殻の色エグシェル(egg shell)という名があり,同じような色である。
2月:紺色(こんいろ)N-899 紺色(こんいろ)
藍染めのごく濃い色をいう。藍染めの専門業を紺屋と言ったことから,染め屋をみな紺屋というほどに,紺の名はポピュラーとなった。英名にネイビーブルー(navy blue)があり,これも紺色に相当する。(9月誕生色)
1月:若紫(わかむらさき)N-923 若紫(わかむらさき)
若の形容は明るく新鮮なイメージを言ったものだから,若紫は明るい紫をいう。昔の草木染めではこれだけの彩度は出そうもない色である。
12月:栗梅(くりうめ)N-754 栗梅(くりうめ)
伝統色名には赤紫みがかった色に梅の字のつく色名がある。その点からいって,栗梅は紫みがかった栗色のような色をいう。絵の具のバーントシエンナはこれに似た色である。
11月:黄朽葉(きくちば)N-986 黄朽葉(きくちば)
朽葉は平安時代の装束の色名にある。稲科の植物で染める。その色の範囲は広く,そのなかで黄みによった色を黄朽葉,青みによった色を青朽葉などと呼んだ。
10月:錆納戸(さびなんど)N-866 錆納戸(さびなんど)
納戸色(なんどいろ)の彩度の低い色をいう。このような錆びの色の使用が,江戸時代に武家から民衆の間にまで浸透していって,“しぶい”と言われる独特な色彩感覚を培うことになった。
〔参考〕納戸色(なんどいろ)N-885
9月:小鴨色(ティール グリーン)N-864 小鴨色(ティール グリーン)
鴨(かも)の首のあたりに光沢のある濃い青緑色が見られる。その色からきたティールグリーン(teal green)という名がある。
8月:水色(みずいろ)N-872 水色(みずいろ)
青の明るいうすい調子の色範囲を空色の系統とすると、水色もその系統だが、空色よりも緑みによった色を一般に水色というのである。英名はアクア(aqua)という。
7月:支子色(くちなししろ)N-790 支子色(くちなしいろ)
支子(くちなし)の花は白くて香りが強いが、その実から採る色素は黄色で、これで染めた色をいう。黄支子とも言われる。くちなしだから(言わぬ色)ともいった。
6月:ライラック N-917 ライラック
ライラック(lilac)の花に見る色。ライラックはモクセイ科の草木で芳香がある。色もなんとなく香しい感じがあって女性好みの色である。フランス名はリラ(lilas)という。
5月:浅葱色(あさぎいろ)N--881 浅葱色(あさぎいろ)
伝統色名の浅葱色(あさぎいろ)は、青みがかって見える葱の色からきた色名である。藍染めの浅い色の緑みを言ったのだが、これほどの彩度はでない。今日では、合成色料ででる鮮明な色範囲まで浅葱色の名で呼ばれる。
4月:若緑(わかみどり)N-841 若緑(わかみどり)
明るく新鮮な感じの緑をいう。明るい緑に若の形容をつけ、暗くくすんだ緑に老の形容をつけて呼ぶ言いかたが伝統的にあった。古い伝統色名での若緑はむしろ若葉緑のような黄みの緑をいった。
3月:鴇色(ときいろ)N-708 鴇色(ときいろ)
国際保護鳥の鴇(とき)は現在日本の佐渡島に数羽しかいない。鴇色の名は江戸時代から使われている。鴇の風切羽根がピンクで、飛ぶ姿にその美しい色が見られる。
2月:飴色(あめいろ)N-739 飴色(あめいろ)
透明感のある飴のような色をいう。銅の色のカッパー(copper)という色名もこれに近い。
1月:茜色(あかねいろ)N-726 茜色(あかねいろ)
茜草の根を染料としたのは非常に古く、地中海沿岸に産するマダー(madder)が西洋茜根で、昔トルコ人の被った帽子のトルコ赤も茜根染であったという。
12月:ターコイズ ブルー N-880 ターコイズ ブルー
ターコイズブルー(turquoise blue)はターコイズの青みがかった色,緑みの青をいう。これの緑みがかった色はターコイズグリーンという。ターコイズは合成色料による人工色彩の幕あけを象徴するような色である。
11月:抹茶色(まっちゃいろ)N-838 抹茶色(まっちゃいろ)
茶道で用いる抹茶のようなやわらかな感じの黄緑をいう。これはブラウンの茶色ではない。ソフト感覚が流行するときにはこの色も出てくる。
10月:黄丹(おうに)N-737 黄丹(おうに)
延喜式にこの名がある。支子(くちなし)の下染めに紅花を染め重ねた色である。丹(に)は赤をいう古語であり,黄丹は今でいうオレンジに近い色で,黄丹の衣(おうにのきぬ)は皇太子の正式の礼服の色として定められていた。
9月:鉄色(てついろ)N-868 鉄色(てついろ)
鉄色の名は,呉須(ごず)という陶器の釉薬(うわぐすり)に用いる藍色顔料の色に鉄分を含んでいることからきたものである。
8月:柑子色(こうじいろ)N-743 柑子色(こうじいろ)
柑子は橘(たちばな)と同じで,その実からきた色名である。明治初期に刊行された文部省刊の色図にこの名がある。蜜柑色(みかんいろ)と同じような色で,オレンジピールよりもやや黄みのオレンジ色である。
7月:新橋色(しんばしいろ)N-873 新橋色(しんばしいろ)
大正初期に流行した色で,当時の花柳界ではハイカラの方の新橋芸者連中が着はじめたところからこの名がある。輸入された合成染料で,はじめて出た鮮明な浅葱系の色に新鮮な魅力を感じての流行であったろう。
6月:菫色(すみれいろ)バイオレット N-908 菫色(すみれいろ)バイオレット
菫の花に見るきれいな青紫色をいう。“菫の花咲く頃”の歌にもある宝塚歌劇団の袴の色であった。英名ではバイオレット(violet)である。スペクトルの短波長の末端に見る色でこれより短い波長は菫外線(紫外線)となる。
5月:山吹色(やまぶきいろ)N-793 山吹色(やまぶきいろ)
山吹の花の色からきた色名,大田道灌の“山吹の実のひとつだになきぞ悲しき”の言葉は残っているが,今は山吹の花もあまり見られない。この名はクレヨン,パスなどの色に残っているだけである。
4月:ターコイズ N-862 ターコイズ グリーン
ターコイズ(turquoise)は明るい青緑の緑みから青みの範囲を総称する名となっているが,もとはペルシャやトルキスタンに産する宝石のトルコ石の色からきた色名である。西欧では一般に慣用されている色名である。
3月:桃花色(ももいろ)N-709 桃花色 (ももいろ)
桃の花の色からきた色名。古くからあった色名だが、今は桃色というと何かセクシーなイメージに屈折してしまうようだが、英語のピンクは健康や幸福を象徴するいたって健全な色とされている。
2月:白緑(びゃくろく)N-839 白緑 (びゃくろく)
日本画の絵の具の白緑(びゃくろく)は、緑青(ろくしょう)を細かく粉砕にすると白っぽい緑になるので、この名がある。
〔参考〕緑青(ろくしょう)N-850
1月:紅色(べにいろ)N-719 紅色(べにいろ)
奈良時代から化粧料として用いられた紅は,中国から伝来した紅花から採った色素で,やや紫みがかった赤である。現在もこのような紫みがかった赤を紅色といっている。
12月:常盤緑(ときわみどり)N-847 常盤緑(ときわみどり)
常盤樹(ときわぎ)の濃い緑色からきた色名である。常盤色(ときわいろ)ともいう。
英名にはエバー グリーン(ever green)がある。
榊(さかき)、クリスマスのひいらぎなど常盤緑は神事や祭礼には欠かせない。
11月:香色(こういろ)N-783 香 色(こういろ)
丁字(ちょうじ)の木の煎汁で染めた色を香色と名付けたのは、丁字の香りを想ってのことか、またはほんのりと赤みの匂うことを言ったのであろうか、アイディアに富んだすばらしい命名である。
10月:金茶色(きんちゃいろ)N-748 金茶色(きんちゃいろ)
金色の感じの茶で、赤みをおびたゴールド系の色。英名にはブラウンゴールド(brown gold)の名がある。
9月:蒸栗色(むしくりいろ)N-801 蒸栗色(むしくりいろ)
栗の果肉を食用としたことは古事記や万葉集にもある。蒸した栗の果肉の色からきた色名である。
8月:藍白(あいじろ)N-889 藍白(あいじろ)
ごくうすい藍染めの色をいう。藍瓶(あいがめ)を覗いた程度にちょっと染めた色という意味から、瓶覗き(かめのぞき)という名がある。
7月:ひまわり色 N-794 ひまわり色
ひまわりの花のように鮮やかな赤みがかった黄色をいう。英名にはサンフラワー(sun flower)の名があり太陽の暖かさを充分に吸いこんだような色である。
6月:露草色(つゆくさいろ)N-887 露草色(つゆくさいろ)
露草の花に見る色、この花をすった汁を青花といい、染色の下絵をかくのに用いた。万葉人はこれを着草(つきくさ)と呼び、これで衣を染めたこともあった。月草の名はそこから生まれた。この色は花色ともいう。
5月:若苗色(わかなえいろ)N-827 若苗色(わかなえいろ)
稲の若苗のような色、春の七草のイメージから若菜色の名もある。英名のシャルトルーズグリーンがこれに当るが、これはフランスやスペインの修道士がつくったリキュール酒の色からきている。
4月:蘇枋色(すすおういろ)N-720 蘇枋色(すおういろ)
豆科の樹の蘇枋の煎汁を赤色染料として用いることは奈良朝時代からあり、紅染めのようなゆかしさはないが赤系の色に染まる。蘇枋は日本では産しない熱帯の植物で、これが中国から渡来したものらしい。
3月:桜色(さくらいろ)N-704 桜 色(さくらいろ)
桜の花のようなうすいピンク。伝統色名にはこれと似た色に一斤染(いっこんぞめ)という名がある。紅花一斤で絹一匹を染めた紅染めのうすい色をいう。襲(かさね)の色目の名称としても古くからある色名。(3月誕生色)
〔参考〕一斤染(いっこんぞめ)N-967
2月:若草色(わかくさいろ)N-829 若草色(わかくさいろ)
若草のような新鮮な黄緑をいう。英名でもフレッシュグリーン(fresh green)の名がある。黄緑系、緑系の色に若の形容詞がつくことが多いことから、この範囲の色は若さを象徴する色といえよう。
(2月誕生色)
1月:深緋(こきひ)N-725 深緋(こきひ)
大宝令、延喜式の服色にこの名がある。深緋(くろあけ)または(ふかきあけ)と読んだ。茜根(あかね)に紫紺(しこん)を混ぜて染めた。しかし、実際はもっと彩度の低い色であったろう。(1月誕生色)
〔参考〕茜色(あかねいろ)N-726、紫紺色(しこんいろ)N-942
12月:桜鼠(さくらねず)N-948 桜鼠(さくらねず)
桜色がかった明るいグレイをいう。英名ではピンクグレイ(pink gray)である。
11月:柿色(かきいろ)N-732 柿色(かきいろ)
照柿の実のような色をいう。歌舞伎の世界で言われる柿色は、この色ではなく、団十郎茶と言われている茶がかった色である。
10月:藁色(わらいろ)N-809 藁色(わらいろ)
稲を乾燥した藁(わら)の色の、にぶい中間色調の黄色系の色をいう。和室の畳(たたみ)は乾燥した(いぐさ)で作り、新しいうちは青畳といい、これよりもっと緑みによった色である。
9月:竜胆(りんどういろ)N-909 竜胆(りんどう)は秋の野花で、その花に見るようなやわらかい感じの青紫をいう。
8月:瑠璃色(るりいろ)N-891 瑠璃(るり)は天然ウルトラマリンの原鉱石であるラピスラズリ(lapis lazuli)をいい、昔から七宝のひとつとして珍重された。その色からきた色名である。
7月:空色(そらいろ)
				N-877 空色のスカイブルー(sky blue)は青空のように明るい青をいうが,空の色は変化が大きい。したがってかなり巾のある青の明るい色の範囲を総称する名として用いられる。
6月:苔色(こけいろ)N-837 苔の色からきた色名,英名はモスグリーン(moss green),フランス名はヴェルムス(vert mousse)である。苔の色は種類によって色も多少異なり,もっと鮮やかに見えるものもある。
5月:黄水仙(きすいせん)N-802 水仙の花に見る明るい黄色をいう。英名ではダフォディルイエロー(daffodil yellow),フランス名ではジョンキル(jonquille)という。
4月:石竹色(ピンク)N-707 ピンク系統と言われるように,ピンクの名は色の系統別範囲をいう一般的色名になっているが,この語源は,ナデシコ科の石竹(せきちく)の花の色からきている。フランス色名ではピンクのことをローズ(rose)という。
3月:鶸萌葱(ひわもえぎ)N-831 鶸色(ひわいろ)よりも緑みによった色で,萌葱色(もえぎいろ)との中間の色をいう。ことばのひびきがことさら美しい色である。
〔参考〕鶸色(ひわいろ)N-830、萌葱色(もえぎいろ)N-832
2月:紅梅色(こうばいいろ)N-701 紅梅の花の色からきた色名,平安時代の王朝人は重ね着の衣装の配色を自然の風物の色から採り入れ,それに草花などの名をとって襲(かさ)ねの色目の名としたが,紅梅重ねは表紅梅色,裏蘇枋(すおう)とある。
〔参考〕蘇枋色(すおういろ)N-720
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